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NORO01-2308061440/第1巻から-1 ......

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安浦病院創設者西本順次郎は、彼の安浦病院にも広島の元教育医学研究所にもピネールが奴隷的精神障害者を解放しようとする象徴的な像を立てている。障害者も一人の人間としての尊厳が保たれることを願い実践してきた。彼の信念を、実際に安浦病院の患者に訓練に携わってきた安浦病院の医療従事者達がどう理解し、どのように実践してきたかを四季折々を通じて書き残したものが機関紙「野呂」である。それを創刊から彼らの意志を拾い上げて紹介していこうと思う。 記念すべき野呂創刊号の巻頭で、西本順次郎氏は以下の寄稿を寄せている。
野呂国立公園の東に在る安浦病院の特色は、美しい自然環境ということができる。それは精神や脳の障害者を収容治療するのに最適の条件でもある。「美しい自然と美しい人情」こそ私の最も欲する所である。「素直な健全な心」を養い育てるのが私の祈りに近いねがいである。
 早くから現在の院内に行われている協調性のある活動と人間相互の理解の向上のために文芸的作品の生まれることを期待していたのであるが、今日めでたく「野呂」が発刊されて、心から喜びにたえない。それが文芸という名に値しようとすまいと野呂の山が生んだのか、何れのものになるかはわからないまでも作るということ自体に人間性の一端がうかがえるからである。
 職員間にあるムード、職員クラブ活動の動きが自然の野呂と渾然一体となったのものになるよう発刊に際して祈る次第である。また「人間は考える葦である」といった先哲の言葉も忘れないよう、多忙な病院生活の合間合間に職員の誰もが「考えることはたいぎなことだ」ということのないように、考える人になってほしいと願う気持ちでもある。クリスマスの前夜に多忙な業務の余暇を利用して努力された方々に敬意を捧げる。
 昭和三十七年も暮れかかっている今夜職員諸兄姉と共に楽しい宴を迎えるが、まず「野呂」を手に取り一枚一枚を少年のように心わくわくさせて読むことであろう。
(創刊号 「野呂」発刊に際して 院長 西本順次郎)